桑子 利男
(Toshio Kuwako)

専門分野:英文学(主に十八世紀)

E-mail: tkuwako#waseda.jp (replace # with @)

 

Classes

英語英文学科担当科目:

<1年生以上選択>英文学講読I, II、外国文学研究、イギリス映画研究

<2年必修>英文学史I

<3年以上選択>Special Topics in Literature and Culture

<ゼミ>英米文学語学演習I・II N

<大学院>英文学特論II

 

ゼミ紹介:About my seminar

生活の基本的な柱となる衣食住、その中から、<衣>に焦点を当てて、歴史的・文化的・政治的などなど、いろいろな角度から見てゆきたいと思います。<衣>の歴史は人間の歴史と共に長く、古今東西にわたって、そのすべてを隈なくカバーするわけにはいきません。また、一口に<衣>といっても、その内容は多岐にわたっていて、たとえば靴やカツラ、ヘアスタイル、タトゥーなども<衣>の範疇に入ってくることでしょう。
そこで、焦点を英国ないしはヨーロッパに絞りたいと思います。時期的には十八世紀から十九世紀あたりの時代に重点を置きますが、その前後の時代も当然、視野に入ります。
この十八世紀から十九世紀の変わり目頃に、ある重要な出来事がファッションの歴史の中で起こりました。Great Masculine (Male) Renunciation。曰く、<男性の大いなる放棄>。男性が、あるものを放棄したっていうことです。というより、男性のファッションが。
これは英国の心理学者でJohn Flügelという人が言い出した概念なのですが、いったい何を放棄したというのでしょう?<華美>です。つまりは華やかさ、美しさということ。虚飾を廃して、地味で実用的で単色な方向に走った、と。その延長線上に今日の男性スーツのモノポリーがあるわけです。
では、<華美>はどうなったかというと、女性のほうの専売特許になっていった・・・と。このGreat Masculine (Male) Renunciationが起きたのが、十八世紀の終わりから十九世紀の始めにかけて。ファッション(の歴史)の大きなターニングポイントになったとされています。
これにある意味で大きく寄与した一人が、ボー・ブランメルという男。皇太子時代は希代の放蕩者として知られたジョージ四世の友人でもありました。一世を風靡したダンディです。身づくろいに毎日何時間もかけたという男です。ロンドンのファッショナブルな通り(メンズ中心)、ジャーミン・ストリートに像が立っています。その彼が、男性の装いが地味で実用的な方向に向かう流れに掉さしたとしたら、これは実に皮肉というしかありません。逆説的というべきか。
ただ、男性の装いがシンプルになっていったといっても、同じ頃、女性の服装もシンプルになったんですね。それが挿絵に載っているスタイルです。リージェンシー・スタイルというやつです。エンパイア・ラインなどともいって、一時期、日本でもちょっとはやったことがありましたね。
OED(オックスフォード英語辞典)にもこんな定義が載っています:Applied to styles of clothing (esp. a dress with a high waistline), furniture, etc., characteristic of the period of the French Empire (see 5 b (c) and (d)). 例文としては、こんなのが:1958 Vogue Apr. 18 Choose this Empire-line charmer in swirling full length.     1968 Harrods Xmas Catal. 15/2 An Empire line slip in nylon.
ただ、女性の服装がシンプルで、締め付けも緩やかになったのは、リージェンシー時代(1811年―1820年)の一時期だけ。そのあと、また元に戻ってしまいます。それも挿絵にあるとおりです。
こういうようなファッションの変化には、歴史の大きな流れが、実は深くかかわっています。例えばフランス革命などは、その最大のものといっていいでしょう。というか、フランス革命自体も歴史の大きな流れの、一つの徴候、表れ、表現でしかないのかもしれませんが。
授業では今話したようなことを、一つの軸としてやっています。
でも、古い話ばかりでは面白くないので、新しいことにもあれこれ触れながら、やっています。例えば、ミニスカートの話だとか、デニムの話だとか。それから、ファッション・デザイナーやファッション・モデルのことなどにも、ちょっと触れたりしています。それから、最近はやりの性的越境(transgender)とファッション、とか。ファッションとジェンダーは密接に関わっていますから、当然<トランス>ジェンダーも、ファッションを語るとき、無視するわけにはいきませんし、また素材にも事欠きません。

このあたりで、参考までに、最近私が講義した題目を、ざっと列挙しておきましょう。

「20 Styling Codes、女は二度」、「コルセットを脱いだ・・・」、「女が最初に肉体を解き放ったとき」、「男👨と女👩の曖昧な――曖昧になりはじめた――境界線」、「ミニスカート革命とマリー・クアント(+ロラン・バルトで考えるミニスカート 強制され、伝わらなかった「若さ」)」、「キットカット・クラブと肖像画、そして/或いはカツラ」、「エンパイアライン」、「19世紀の男性ファッション概観」、「オートクチュールの誕生」、「クリノリンとバッスル」、「MADE IN ITALY」、「ハイヒール小史」、「ハイヒールの危険なエレガンス」、「ジョン・ガリアーノとメゾン・マルタン・マンジェラ ~ 関係の必然 ~」、「男性の服装に物申す」、「Men’s clothes 1700-1750」、「カツラの衰退」、「デニム(denim)≒ ジーンズ(jeans)」、「ファッション、反ファッション」etc.

新しい話も、実は古くからの流れとどこかでつながってくるんですね。つながりが見えてきたりすると、とても面白いです。ハイヒールやカツラなども、政治や文化を含めた、大きな流れと密接にかかわっています。
まあ、そういう大きな流れとわざわざ結びつけなくても、ファッションのことを考えるのは、とても楽しいことです。美しくて華やかな面も持ち合わせていますから。でも、歴史や文化と結びつけるともっと面白くなります。たとえば、前にも触れた次の挿絵をご覧ください。
1800年前後は、シンプルで飾り気がなく、ドレスの胴の部分がゆったりしているのがわかりますね。布地も透明でサラサラしたものが使われています。透けて見えそうなくらいです(笑)。
どうしてこのような変化が生じたのでしょう?ドレスだけではありません。靴や装身具、ヘアスタイルなども常に変化しています。こうしたことを皆さんといっしょに調べたり、考えたりしていけたらいいなと思っています。

 

自己紹介:About myself

花を愛でることが趣味で、毎日花の写真をインスタグラムなどにアップしています。

専門紹介:My academic field

専門領域は十八世紀英文学ということになっていますが、実際のところ、逸脱を繰り返してきました。これからもたぶん逸脱し続けることでしょう。逸脱したい方は僕のところへどうぞ。いっしょに領域横断的浮遊をしましょう!

私の学生時代:My school life

学生時代はひたすら「勉強」の毎日でしたね。一日14時間くらいは机に向って読んだり書いたりしていました。古典語(ギリシア語、ラテン語)も含め、いろいろな外国語にも手を出しました。拠点を掘り下げるよりも、横滑りを好む「癖(ヘキ)」は当時からのもので、今も治っていません(前項参照)。もう治せないのではないでしょうか。本人に治す気がないし。でも、引退したら、意外に、一つのことに打ち込むようになるかもしれません、引退したシャーロック・ホームズが養蜂に精を出したように。

学生の声:What the students say

<ゼミ生より>

価値観を押し付けてこない先生ですね。というより、そもそも自分の価値観がないのかも(失礼)。

主要著作:Main Publications

著書:『批評的な触手』(七月堂)、『英国批評研究序説』(音羽書房鶴見書店)、『諸縁を放下すべき時なり』(七月堂)、『異言語と出会う、異文化と出会う』(風間書房)

訳書:『百年前の絵本――R・コールデコットの前半生』(ブックグローブ社)、『オカルティズム事典』(三交社)、『架空地名大事典』(講談社)、『21世紀 イギリス文化を知る事典』(東京書籍)、『パーディタ――メアリ・ロビンソンの生涯』(作品社)、『アントニー・ブラント伝』(中央公論新社)