2012年度6月研究例会 (第109回オペラ研究会)

第1部:書籍出版に向けた相互査読(研究員・会員向け)

第2部:研究発表

ロシア・オペラ史概観 *詩人プーシキンの諸作品をめぐって

◇発表者:三浦領哉
◇日時:2012年6月9日(土)14:00-18:00
◇会場:早稲田大学 早稲田キャンパス 8号館 219会議室
◇言語:日本語

第2部概要

ロシアにおいて「ロシアの作曲家によるロシア語のオペラ」が成立するのは、ようやく19世紀を迎えてのことであった。しかし 19世紀後半のムソルグスキー《ボリス・ゴドゥノフ》やチャイコフスキー《エフゲニー・オネーギン》に代表されるロシア・オペラ黄金時代ののち、オペラはロシアにおける「最有力舞台芸術」としての地位を失うことになる。

本発表では、わずか1世紀半ほどのロシア・オペラ史を概観すると共に、それとロシア文学史との間に存在する、ある密接かつ特別な関わりについて考察が行われた。その結果明らかになったのは、ロシア・オペラの歴史と発展を踏まえた上で、詩人アレクサンドル・プーシキン(1799-1837)を主な軸として考察すると、ロシア・オペラのモダニズム前夜における到達点の一つが見えてくるのではないかということである。


開催記録

参加者:19名

質疑応答

今回の発表では、神話の不在がロシア・オペラ史のキーワードになっているが、西欧においても神話の再発見は19世紀後半のことであり、その点についてはどう考えているのかという質問があった。それに対して発表者から、ロシアの場合は根本的「体系的な神話」が資料上も残っておらず、ごく一部がフォークロアの中に取り込まれているに過ぎないと説明された。また、神話の不在によって ロシアの音楽界が「民話」を選択した点に関して、特に国民楽派についてはそうであり、オペラに限らず交響詩や組曲の題材にも圧倒的に民話が多いという補足もあった。