2018年度1月研究例会(第177回オペラ研究会)

研究発表

エカテリーナ2世時代のロシア宮廷におけるオペラ・セリア上演の実態――トラエッタの《アンティゴナ》(1772年)を中心に――

◇発表者:森本頼子
◇日時:2019年1月19日(土)16:30-18:00
◇会場:早稲田大学 早稲田キャンパス 3号館 702教室
◇言語:日本語

概要

ロシア・オペラ史において、エカテリーナ2世時代(1762~96年)は、宮廷劇場に加えてさまざまな民間劇場でオペラ上演がさかんになるなど、オペラ文化が大きく発展した時期と位置づけられる。とりわけ、この時代のロシアでは、各国の喜歌劇が興隆したことがよく知られるが、その一方で、イタリア人宮廷楽長によりオペラ・セリアの上演も続けられていた。彼らのなかには、ロシア滞在中にオペラ創作の腕を磨き、傑作を残した者もいた。たとえば、トラエッタは、彼のオペラ・セリアの代表作となった《アンティゴナ》を、ロシアでの宮廷楽長時代に創作・上演している。

本発表では、これまであまり注目されてこなかった、エカテリーナ2世時代のオペラ・セリア上演の実態について、トラエッタの《アンティゴナ》を例に検討する。作品の成立過程や上演の様子について、当時の宮廷劇場の状況と照らし合わせながら考察するとともに、台本や楽譜の分析を通じて、作品の特徴を浮き彫りにする。本発表によって、18世紀を通じて、ロシアではオペラ・セリア上演の慣習が途絶えることなく続き、世界的にも、ロシアがオペラ・セリア創作の源泉の一つとなっていたことを明らかにする。

発表者プロフィール

愛知県立芸術大学大学院音楽研究科博士後期課程(音楽学領域)修了。博士(音楽)。専門は、西洋音楽史およびロシア音楽史。主要論文に、「シェレメーチェフ家の農奴劇場(1775~97年)におけるトラジェディ・リリック上演の試み――領主ニコライとパリ・オペラ座の音楽家イヴァールの往復書簡を手がかりに」(『音楽学』第60巻、2014年)。現在、愛知県立芸術大学、金城学院大学、名古屋音楽大学、名古屋大学、各非常勤講師。早稲田大学オペラ/音楽劇研究所招聘研究員。

※プロフィールは発表当時のものです


開催記録

参加者:18名

コメントを残す